2007.07.24
ここに連れてきた大切なもの
男の子
祖母の撮った花の写真
へルマンヘッセ「庭仕事の楽しみ」
曇り空
きのうの夢が雷のように打ち
きょうは夢中になって、花の写真を撮っている
ひろいひろい庭をさまよいあるき
誰が世話をしているのだろうと思う
なんのために?
子供用のブランコの足下にひろがる
雨上がりの芝生にかがみこんで
四葉のクローバーを探しはじめる
みつかったら逃げないで
もういちど恋をしてみるとか
四葉のクローバー探しはわたしの特技だから
あっけないほど簡単にみつかった
押し花にして送ろうかな
(多分そうしないけど)
恋ってなんだろう
わたしの恋は実らない
そう考えるのが気楽だからでもあるし
叶うことが恐ろしいから
恋なんて人間の作ったとてつもない幻想のように思える
それでいて美しく
いつも憧れてしまうもの
咲き誇る庭の花のように
自分のものにした瞬間から
死んでいくと決められているものなのに
17:55分
祖母の撮った花の写真を壁に貼る
じぶんの小さい庭で
丹精こめて咲かせた花たちの写真は
ときに裏に日付が刻まれている
5月
28、29、30……と
日々花ひらいていくバラのアーチを撮ったもの
一晩しか咲かない月下美人を
いろいろな角度から写したもの
どれもこれも
画質がわるい10円プリント
でも
彼女の花への情熱
というよりも執着心が伝わってくる
それは切なくて
ほんとうに
美しい
写真を飾った壁のそとには
祖母のとは比べものにならないほど
素晴らしい庭が広がっている
外国の
夢のように美しい場所に
自分の庭が運ばれるなんて
きっと彼女は想像もしなかっただろう
そう思うとわたしのいたずら心がくすぐられる