2007.07.23

白髪をみじかく切りそろえたハンサムな男性が
家でわたしたちをにこやかに迎える


年齢を若く見せる軽快な足どりで
大きな、わたしたちの黒いスーツケースを
白いバンの荷台に放り投げるように積み込む
エンジンをかけた瞬間
轟音のマリアッチがステレオから流れ
心臓が止まりそうになる


シートベルトをするように彼は言った


古い城壁の町を通り過ぎ
ふたたび遠くまで広がる畑
横道を一本は入り
車は停まった


おおきな松の木
羊たち
知らない人々
聞き慣れない言葉
なまりのつよい英語


わたしと息子


ここで3週間
やっていけるのだろうか




夜、夢を見た





わたしたちは
とうの昔からそれが当たり前だったかのように
親しげに会話を交えている


指が私の肩にふれる
いつもながめている
無骨でなめらかな表面をした手


お互いに相手をいたわりあっていると
はっきりわかる瞬間がきて
わたしは確信を持って目を覚ます
(けれどこれは所詮ただの夢にすぎない)


何度もなんども
かんがえたが答えは出ない
だからわたしは
よくわからないままにした


近くにいるほど、正体がみえない
それは温度であり、時間だからなのか
孤独になってはじめて
あたたかさと、永さに気づく


ー17時間の距離はどれくらいだろう
それだけはなれて
やっとかすかに感じるものもある

夢でみたものを
信じてみることの馬鹿らしさはどのくらいだろう?